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執筆者の写真SCGR運営事務局

【#21】2025年の注目点:②利上げ


MIRAL LAB PALETTE × SCGR企画 SC Kaleidoscopeでの様子
2025年の注目点


経済部 シニアエコノミスト



最近、銀行預金通帳を見たら、今まで生きてきた中で見たことのない金利がついていました。ゴミがついていると思って、手で払ったのになかなか取れず、何かとよく見たら「1」円と書いてあったあの頃が懐かしいです。

 

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策とイールドカーブ・コントロール政策(YCC)をやめました。また、7月には政策金利を0.25%程度まで引き上げました。金利のある世界に、日本経済も戻ってきました。

 

しかし、その後、政策金利は半年間、据え置かれました。久しぶりの金利のある世界なので、企業や個人によっては勝手がよくわからない面もあるため、政策判断は慎重に実施されています。こうした中で、市場には、2025年初めにも利上げが実施されるという見方があります。それでも0.5%程度に引き上げられるのが次の段階です。米欧などの金利水準に比べると、まだ低いままです。

 

物価上昇率が目標の2%前後で推移すると、2026年度までの見通し期間の後半にかけて、確度をもって予想できる状態にあれば、政策金利がさらに引き上げられるでしょう。植田日銀総裁も、前回の利上げ局面で上限となった0.5%が今回の利上げ局面の上限ではないということを述べており、状況次第ではもっと金利が上昇する可能性があります。利上げ幅を1回あたり0.25%とすれば、2025年内に政策金利が0.75%程度まで上昇しても、おかしな話ではありません。

 

もちろん、これまでも先行きが見通し難かった世界は、第2期トランプ政権の発足や中東情勢などの地政学リスクの高まりなどにより、さらに不透明になっています。実際に「新体制下で揺れる世界」となれば、先行きはなかなか見通し難いことは事実です。そうした中で、日本の経済成長率が鈍化し、物価上昇率が2%を下回るようになると、追加利上げを実施するハードルは高まります。想定のように利上げが進むかもよくわからない状況です。

 

ただし、金利のある世界の対応が重要なことには変わりありません。これまで以上に、資金を借りるにも金利負担がかかります。例えば、米長期金利が2024年末までおおむね4%超で推移してきたことを踏まえると、それ以上の事業収益性を確保しなければなりません。日本国内でも、長期金利が1%程度で推移してきたので、資本コストは上昇しつつあります。そのため、一時に比べて厳しい事業環境になってきたともいえます。一方で、預金金利が上昇したように、資金を貸す側・出す側はその相手先の企業業績次第ですが、それに応じた収益を確保できることになります。これまで以上に、金利のある世界のリターンとリスクを計算しなければならない状況です。

 

しかし、日本では金利がない世界が四半世紀ほど続いてきたので、企業の中で、金利がある世界を知っている世代が少なくなっています。比較的若い世代は、金利がない、変動が小さい世界をこれまで生きてきたので、思考にはその方向にバイアスがかかりやすい傾向があります。2024年以降に労働市場に参入してきたさらに若い世代は、金利がある中で社会人をスタートしたので、対応しやすいかもしれません。しかし、金利があるといっても依然として低水準である上、まだその世代の人数は労働市場には少ないし、人手不足なので、それより上の世代にも活躍してもらわなければなりません。そう考えると、金利がある世界を知っていて、かつ適切に対応できる世代の人の知識とノウハウを、次の世代に残していくことも2025年以降、重要になります。


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